

M氏は、そんな説明では納得できないといって、質問をくり返し、E氏に事実ではないことを認めさせようとした。
すなわち、M社がD社をほしがった唯一の理由は、ライバルにその会社を渡さないためだったと。
「ちがいます」E氏の忍耐は限界に近づいていた。
N氏はこれを気に入るはずだ。
わたしがその文章にこめた気持ちは、これに尽きます。
あなたがひとつの文章に費やしている時間は、わたしがそれを書いた時間よりもはるかに長く、桁ちがいです。
わたしは自分が書いた文章の単語ひとつひとつを分析するつもりはありません。
判事は口をはさまずにいられなかった。
きみは法廷に来たことがないようだね。
それは、判事がM社の証人を笑うのではなく、証人といっしょに笑った数少ない機会のひとつだった。
その日の午後は、4時53分で休廷になった。
E氏の証言はすばらしかった。
N氏だけが不平をもらした。
わたしの名前をあんなに何度も出す必要があったのか。
翌朝、法廷にはいったE氏は、だいぶ自信を取りもどしているように見えた。
明るい黄色のドレスシャツを着ているのは彼ひとりだった。
愛想のよい裁判所職員が小声でジョークをいうと、E氏は、法廷内の静かなざわめきを吹き飛ばすような大声で笑った。
この日も、E氏は法廷のスケッチ画家とことばをかわし、まだ完成していない自分の家に飾りたいから、似顔絵を一枚描いてくれないかと頼んでいた。
だが、もしもアップルが協力してくれなかったら、E氏は闘うつもりだった。
「わかってください」E氏はあとで付け加えた。
わたしはすわってテレビをながめているつもりはありません。
競争をするんです。
E氏は、オーランドで開かれたシグラフ見本市を、忘れられない7月のあの日のことを思いだし、法廷に向かって語りはじめた。
M社がアップルのクイックタイムに妨害工作を仕掛けたという内容の記事を用意をしていると聞かされた翌日、E氏は知ってしまったのだ。
もとはM社の重役で、その後R社を創立したG氏が、上院司法委員会の席上で、M社が意図的にウィンドウズのプログラムを書き換えてR社のマルチメディアプレイヤーが動かなくなるということであった。
E氏は、あの一連の会合は、コーデックを共有しようという善意からおこなったものだったし、アップルから脅迫されている気がするといわれたことはいちどもなかったと説明した。
さらに、第3者によるテストの結果、問題を引き起こしたバグは、ウィンドウズではなくクイックタイムのほうにあったことが判明したのだと指摘した。
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